■雄蛇ヶ池のアオコ調査 2010.07
※これは転載記事です。本稿転載は、「ザ・レイクチャンプ」よしさんより許可を頂いています。(転載元ページ:亀山ワカサギ情報


アオコ現象連続発生の千葉県雄蛇ケ池
Onjyaga-ike pond of the waterbloom consecutive outbreak.

fig.01 雄蛇ケ池のアオコ現象(弁天谷津西側)

【アオコ現象連続発生の千葉県雄蛇ケ池】
雄蛇ケ池(千葉県東金市)は、1614(慶長19)年に完成した、大規模な灌漑用溜池である(※05)。

【経緯と目的】
千葉県雄蛇ケ池では、繁茂した水生植物の除去を目的に、2006年早春に草食魚ソウギョが放流された。
2007年に水生植物の減少が顕著になり、2007年秋季までに、水生植物帯の約70%程度が消滅し、生態系に最大級の影響を与えた。
水生植物はソウギョに食害され、水中に排出されたソウギョの糞塊は微生物による分解変質を経て、植物プランクトンに利用されやすい中間体となり、水面被植面積縮小による高水温と底泥巻上げを併せ、ミクロキスティス・アナベナ・オシラトリア等の藍藻類大繁殖を助長し、重度で複合したアオコ現象を毎年反復し招来させていることが、明らかになった(※07〜※13)。
換言すれば、雄蛇ケ池の水生植物はソウギョの糞塊となり、藍藻類異常繁殖を引起す主因になっているという相関関係が指摘できる。

2009年には、ソウギョ放流推進派により、アオコ現象の著しい夏季に、雄蛇ケ池の貯水を水深約1m分捨水し、表層の目視されやすい水の華(アオコ現象)を排出低減させようとする新しい試み(捨水管理)が、2度反復実施された。
06月下旬〜07月下旬の第1回目結果を追試解析すると藍藻類5種が残存し(※14)、08月中旬〜08月下旬の第2回目捨水管理結果では、藍藻類8種の雄蛇ケ池内繁殖が確認された(※15)。
2009年11月02日東京地方で木枯らし1号観測、03日盛岡・山形・新潟で初雪観測、04日水戸で初氷観測、雄蛇ケ池では紅葉の季節を迎える等、外気温及び水温低下にもかかわらず、11月16日(月)も水の華(アオコ現象)は継続発生していた(※16)。

2010年は、雄蛇ケ池の一部エリアで、05月27日・06月10日・27日・07月01日に、アオコ現象が発生していた(※17)。
よしさんは、2010年07月04日、雄蛇ケ池クリーンアップ大作戦へ参加し、アオコ現象で異臭が漂い、吐き気を催す水際のゴミを一人黙々と拾いつつ、アオコ現象の状況確認を行い(fig.01-02 写真)、原因藍藻類解析のため堰堤で池水を採取し、持帰り検鏡した。


【結果】


fig.02 雄蛇ケ池のアオコ現象(見た目アオコ指標 レベル5)
採取した池水を顕微鏡下で観察したところ、今回の水の華(アオコ現象)は、
藍藻のミクロキスティス エルギノーザ(fig.03)、ミクロキスティス ノバセキ(fig.04)、ミクロキスティス ベーゼンベルギー(fig.05)、ミクロキスティス イクチオブラーベ(fig.06)、アナベナ スピロイデス クラッサ(fig.07)、アナベナ マクロスポーラ(fig.09)、コエロスファエリウム ナゲリアナム(fig.08)、の合計7種からなる複合現象で、優占種はミクロキスティス ベーゼンベルギー(fig.05)であることが明らかになった。


fig.03 ミクロキスティス
Microcystis Aeruginosa
エルギノーザ

fig.04 ミクロキスティス
Microcystis Novacekii
ノバセキ

fig.05 ミクロキスティス
Microcystis Wesenbergii
ベーゼンベルギー

fig.06 ミクロキスティス
Microcystis Ichthyoblabe
イクチオブラーベ


fig.07 アナベナ
Anabaena Spiroides var.crassa
スピロイデス クラッサ


fig.08 コエロスファエリウム
Coelosphaerium nagelianum
ナゲリアナム

fig.09 アナベナ Anabaena macrospora マクロスポーラ

それぞれの種の経緯を見ると、
ミクロキスティス ベーゼンベルギー(fig.05)は、今回調査中の優占種であった。
ミクロキスティス イクチオブラーベ(fig.06)は、北米・ロシア(の西端)にも分布し、中国名で「魚害微嚢藻」と呼ばれ(※02)、今回も多く観察された。
ミクロキスティス エルギノーザ(fig.03)、ミクロキスティス ノバセキ(fig.04)、も多く見られ、アナベナ スピロイデス クラッサ(fig.07)、アナベナ マクロスポーラ(fig.09)の個体数は比較的に少なかった。
コエロスファエリウム ナゲリアナム(fig.08)は、インド・中華人民共和国各地に分布し、中国名は「納氏腔球藻」で、「有時形成水花」の生境とされる(※02)、が今回の出現は極少であった。
国立環境研究所の提唱した「見た目アオコ現象」(※11)のレベルをあてはめると、池全体は3〜4、塚本ボート桟橋周辺・堰堤北側・弁天谷津(東側・西側共)でレベル5であった。

【考察01】
平均水深2m程度と浅い皿池形状の雄蛇ケ池において、重度で複合したアオコ現象が毎年反復し発生している原因は、既に明らかにした(※07〜※16)。
動物プランクトンの糞塊(未消化排出物)は、雄蛇ケ池におけるソウギョの糞塊と比較し、あまりにも小規模であるが、長野県の灌漑用溜池白樺湖(面積は雄蛇ケ池の約1.5倍)において、次の事例が報告されている(※06)。
すなわち、灌漑用溜池の植物プランクトンの捕食を目的に、茨城県霞ケ浦由来の動物プランクトンの一種・カブトミジンコ Daphnia galeata を移殖放流したところ、白樺湖の植物プランクトン量が減少し透明度が上昇すると共に、水中の全リン量が減少し、逆に池底の全リン濃度が高くなる傾向がみられたことから、カブトミジンコがリンを糞塊に変え、水深8mの池底に沈降・蓄積させていると考えられる(※06)、というもの。
浅い池底に、ソウギョの糞塊として蓄積された大量の栄養塩は、波浪により容易に雄蛇ケ池全体に拡散し、高水温と太陽光線に後押しされ、藍藻類の異常繁殖を招いていると、よしさんが指摘した原因のメカニズムの一端は、上述の事例からも暗示される。

【参考文献】
(※01)生嶋 功(1991):「水の華の発生機構とその制御」第2刷,183pp,東海大学出版会,\1648
(※02)朱 浩然(1991):「中国淡水藻志 第二巻 色球藻綱」第1版,vi+161pp,科学出版社(北京),13.00元
(※03)藤田善彦・大城 香(1993):「ラン藻という生きもの」第2刷,134pp,東京大学出版会,\1648
(※04)渡辺真利代・原田健一・藤木博太(1994):「アオコ−その出現と毒素−」257pp,東京大学出版会,\4738
(※05)よしさん(1996〜2010):雄蛇ケ池「ザ・レイクチャンプ」http://lake-champ.com
(※06)河 鎭龍・花里孝幸(2006):「バイオマニピュレーションが行なわれた湖(白樺湖)では何故全リンが減ったのか」日本陸水学会 講演要旨集 http://www.jstage.jst.go.jp/article/jslim/71/0/62/_pdf/-char/ja/
(※07)よしさん(2006):「水の華シロコ現象とは(亀山湖における2005年の事例)」http://wakasagi.jpn.org/
(※08)よしさん(2006):「アオコとは(雄蛇ケ池における2006年の事例)」http://wakasagi.jpn.org/
(※09)よしさん(2007):「アオコとは(雄蛇ケ池における2007年の事例)」http://wakasagi.jpn.org/
(※10)よしさん(2008):「雄蛇ケ池のアオコ現象と原因藍藻類の変遷(2006〜2008年)」http://wakasagi.jpn.org/
(※11)よしさん(2008):「見た目アオコ指標と指標写真」http://wakasagi.jpn.org/
(※12)よしさん(2008):「雄蛇ケ池におけるアオコ現象と想定される毒性」http://wakasagi.jpn.org/
(※13)よしさん(2008):「これがソウギョの糞塊だ(千葉県雄蛇ケ池の事例)」http://wakasagi.jpn.org/
(※14)よしさん(2009):「雄蛇ケ池のアオコ現象、見た目と実態(2009年)」http://wakasagi.jpn.org/
(※15)よしさん(2009):「アオコ現象の千葉県雄蛇ケ池における捨水管理と結末」http://wakasagi.jpn.org/
(※16)よしさん(2009):「紅葉してもアオコ現象の千葉県雄蛇ケ池」http://wakasagi.jpn.org/
(※17)つかじー(2010):「雄蛇ヶ池の話 〜蛇(じゃ)の道は蛇(へび)〜」http://ojyagaike.naturum.ne.jp/


【謝辞】
雄蛇ケ池を通年観察し、都度状況を報告くださる「雄蛇ヶ池の話 〜蛇(じゃ)の道は蛇(へび)〜」主宰つかじーさんに感謝します。
採取:2010年07月04日(日)10:30 天候◎○ 気温:28.1℃ (at11:00 mobara) 水温:28.0℃
水位:0.8m減水 水の透明度:不良 検鏡撮影:2010年07月05日(月)
発表:2010年07月07日(水)前・牛久沼漁業協同組合顧問よしさん