■雄蛇ヶ池のアオコ調査 2009.9
※これは転載記事です。本稿転載は、「ザ・レイクチャンプ」よしさんより許可を頂いています。(転載元ページ:亀山ワカサギ情報


アオコ現象の千葉県雄蛇ケ池における捨水管理と結末
Forced blow down water, in Onjyaga-ike pond of the waterbloom and an ending.

fig.01 雄蛇ケ池(揚水ポンプ付近)と、fig.02 水面のアオコ現象(同所)

【アオコ現象の千葉県雄蛇ケ池における捨水管理と結末】
雄蛇ケ池(千葉県東金市)は、1614(慶長19)年に完成した、大規模な灌漑用溜池である(※04)。

【経緯と目的】
千葉県雄蛇ケ池では、繁茂した水生植物の除去を目的に、2006年早春に草食魚ソウギョが放流された。
2007年に水生植物の減少が顕著になり、2007年秋季までに、水生植物帯の約70%程度が消滅し、生態系に最大級の影響を与えた。
水生植物はソウギョに食害され、水中に排出されたソウギョの糞塊は微生物による分解変質を経て、植物プランクトンに利用されやすい中間体となり、水面被植面積縮小による高水温と底泥巻上げを併せ、ミクロキスティス・アナベナ・オシラトリア等の藍藻類大繁殖を助長し、重度で複合したアオコ現象を毎年反復し招来させていることが、明らかになった(※05〜※11)。
換言すれば、雄蛇ケ池の水生植物はソウギョの糞塊となり、藍藻類異常繁殖を引起す主因になっているという相関関係が指摘できる。


2009年には、ソウギョ放流推進派により、アオコ現象の著しい夏季に、雄蛇ケ池の貯水を水深約1m分捨水し、表層の目視されやすい水の華(アオコ現象)を排出低減させようとする新しい試み(捨水管理)が、2度反復実施された。
06月下旬〜07月下旬の第1回目結果は、既に報告した(※11)。
その概略を述べれば、水面の「見た目アオコ指標」レベルは、レベル1〜2程度となり、水の華(アオコ現象)は解消され解決されたかに見えたが、「実態」は一見して清澄に見えるサンプル水中にも、水の華(アオコ現象)を引き起こす藍藻類5種が残存し、残存量は定量的に総量の半数程度と推定された(※11)。


08月中旬〜08月下旬の第2回目捨水管理により、水の華(アオコ現象)の原因藍藻類が排除されたかを確認するため、2009年09月17日(木)午後、堰堤で池水を採取し(fig.01-02写真)、持帰り、検鏡した。


【結果】
採取した池水を顕微鏡下で観察したところ、約1mm四方の範囲の藍藻類は以下のようであった(fig.03写真)。



fig.03 池水の顕微鏡観察(写真は1.1×0.8mm四方の範囲を示す)

さらに詳細に観察すると、今回の水の華(アオコ現象)は、
藍藻のミクロキスティス エルギノーザ(fig.04)、ミクロキスティス ノバセキ(fig.05)、ミクロキスティス ベーゼンベルギー(fig.06)、ミクロキスティス イクチオブラーベ(fig.07)、アナベナ スピロイデス クラッサ(fig.08)、アナベナ アフィニス(fig.09)、アナベナ テネリカウリス(fig.10)、クロオコックス属(fig.11)、の合計8種からなる複合現象であることが明らかになった。



fig.04 ミクロキスティス
Microcystis Aeruginosa
エルギノーザ

fig.05 ミクロキスティス
Microcystis Novacekii
ノバセキ

fig.06 ミクロキスティス
Microcystis Wesenbergii
ベーゼンベルギー


fig.07 ミクロキスティス
Microcystis Ichthyoblabe
イクチオブラーベ



fig.08 アナベナ
Anabaena Spiroides var.crassa
スピロイデス クラッサ



fig.09 アナベナ
Anabaena Affinis
アフィニス

fig.10 アナベナ
Anabaena Tennericaulis Nygaard

fig.11 クロオコックス属
Chroococcus sp.
クロオコックス属


【考察01】
2009年の雄蛇ケ池の水位と「見た目アオコ指標」レベルの経過は、表01の通りである(table.01 出典※12)。

2009年07月26日 1.1m減水 レベル2
2009年07月30日 0.9m減水 レベル4〜5
2009年08月02日 0.7〜0.8m減水 レベル3〜5
2009年08月06日 0.6m減水
レベル3〜6
2009年08月08日 0.6m減水
レベル3 
2009年08月13日 満水 レベル3〜4
2009年08月18日 0.5〜0.6m減水 レベル3
2009年08月23日 1.1m減水 レベル3
2009年08月27日 1.0〜1.1m減水 レベル3
2009年08月30日 1.0m減水  
2009年09月02日 0.6〜0.7m減水 レベル3
2009年09月05日 0.5m減水 レベル3〜6
2009年09月13日 0.4m減水 レベル3
2009年09月17日 0.3m減水 レベル3〜5
table.01 雄蛇ケ池の水位と「見た目アオコ指標」レベルの経過(2009年)

第1回目捨水工程の終了した07月19日〜07月26日の「見た目アオコ指標」レベルは、レベル2程度に軽減された(※11)。
表01で、2009年08月13日の満水から、08月23日の1.1m減水迄の水位下降期が第2回目捨水工程である。
第2回目捨水工程の終了した08月23日の「見た目アオコ指標」レベルは、レベル3程度に留まり清澄感がなく、第1回目捨水工程終了時よりも劣っていた。それはなぜか。
1.1m減水から満水に至る水位上昇期については、第1回目も第2回目も同様に、水位上昇開始後わずか4〜5日間程度でレベル4〜5、レベル3〜6へと各々悪化した。


これらの事実は、藍藻類異常繁殖をもたらす原因を見過し、根源的対策を執らぬのみならず、ベンチスケールテストに基づく試みの明確な根拠と成果予測、その説明もなされぬまま、あろうことか実物大の雄蛇ケ池を試験フィールドに用い、単なる思いつきで、表層の水の華(アオコ現象)を流失させれば事足りるとした、ソウギョ放流推進派の捨水管理の誤りを告げている。
端的に言えば、対処療法たる捨水管理で水の華(アオコ現象)の原因藍藻類の重篤化が止められぬ、当然の事例となった。
冷夏気味で日照不足の成育的逆風条件下においても、水の華(アオコ現象)を引き起こす藍藻類5種は、2ケ月後に8種へと増加出現し、より微小な群体を形成するアナベナ スピロイデス クラッサ(fig.08)が優占種であったことの2点が、第2回目捨水工程終了時の透視度低下の要因と考察される。
次のステップのための、試みの事後評価や公表も自力でなされぬとは、これまた、いかがなものか。
「2006〜2009年の雄蛇ケ池における藍藻類の変遷」については、別途報告したい。




【参考文献】
(※01)生嶋 功(1991):「水の華の発生機構とその制御」第2刷,183pp,東海大学出版会,\1648
(※02)藤田善彦・大城 香(1993):「ラン藻という生きもの」第2刷,134pp,東京大学出版会,\1648
(※03)渡辺真利代・原田健一・藤木博太(1994):「アオコ−その出現と毒素−」257pp,東京大学出版会,\4738
(※04)よしさん(1996〜2009):雄蛇ケ池「ザ・レイクチャンプ」http://lake-champ.com
(※05)よしさん(2006):「アオコとは(雄蛇ケ池における2006年の事例)」http://wakasagi.jpn.org/
(※06)よしさん(2007):「アオコとは(雄蛇ケ池における2007年の事例)」http://wakasagi.jpn.org/
(※07)よしさん(2008):「雄蛇ケ池のアオコ現象と原因藍藻類の変遷(2006〜2008年)」http://wakasagi.jpn.org/
(※08)よしさん(2008):「見た目アオコ指標と指標写真」http://wakasagi.jpn.org/
(※09)よしさん(2008):「雄蛇ケ池におけるアオコ現象と想定される毒性」http://wakasagi.jpn.org/
(※10)よしさん(2008):「これがソウギョの糞塊だ(千葉県雄蛇ケ池の事例)」http://wakasagi.jpn.org/
(※11)よしさん(2009):「雄蛇ケ池のアオコ現象、見た目と実態(2009年)」http://wakasagi.jpn.org/
(※12)つかじー(2009):「雄蛇ヶ池の話 〜蛇(じゃ)の道は蛇(へび)〜」http://ojyagaike.naturum.ne.jp/

【謝辞】
雄蛇ケ池を観察し旬の話題を提供くださる「雄蛇ヶ池の話 〜蛇(じゃ)の道は蛇(へび)〜」主宰つかじーさんに感謝します。


採取:2009年09月17日(木)14:00 天候○ 気温:25.0℃ (at14:00 mobara) 水温:未測定
水位:ほぼ満水 水の透明度:不良
検鏡撮影:2009年09月18日(金)〜19日(土)
発表:2009年09月23日(水)牛久沼漁業協同組合顧問よしさん