■雄蛇ヶ池のアオコ調査 2009.7
※これは転載記事です。本稿転載は、「ザ・レイクチャンプ」よしさんより許可を頂いています。(転載元ページ:亀山ワカサギ情報


雄蛇ケ池のアオコ現象、見た目と実態(2009年)
The waterbloom of Onjyaga-ike pond, an appearance and the actual situation(2009) .

fig.01 雄蛇ケ池(堰堤付近)

雄蛇ケ池(千葉県東金市)は、1614(慶長19)年に完成した、大規模な灌漑用溜池である。

【経緯と目的】
千葉県雄蛇ケ池において、2006年早春に放流されたソウギョによる水生植物の食害は、オオカナダモ・ヒシモの壊滅状態と、ヨシ・ハスの激減を引き起こした。
同時に、2006年夏季には水の華(アオコ現象)が観察されるようになり(※02)、2007年(※03)・2008年(※04〜06)と連続発生し、その原因藍藻類も単独から複合へと重篤化している(※04〜06)。
2009年は、著しく早い季節の03月下旬より、雄蛇ケ池の一部エリア(小谷津・松田谷津)で水の華(アオコ現象)が観察され、その程度は06月27日に、国立環境研究所の提唱する「見た目アオコ指標」のレベル5〜レベル6(最高)に達した(※07)。
07月に入り、灌漑期に加え、表層の水の華の排出を意図し、16日間で1m強の減水となるよう池水を放水し(※07)、07月19日も1m強の減水を保ち、「見た目アオコ指標」のレベル1〜レベル2程度と水の華(アオコ現象)は解消され、解決されたかに見えた(fig.01写真)。

水の華(アオコ現象)の原因藍藻類が排除されたかを確認するため、雄蛇ケ池クリーンアップ大作戦(草刈り・ゴミ拾い)に参加した2009年07月19日(日)の午後、堰堤で池水を採取し、持帰り、観察した。

【結果】
採取した池水をビーカに入れ、26日まで室内に常温で静置したところ(栄養塩及び酸素は供給せず)、藍藻類の大半は浮上し壁に付着した。しかし、浮上せず、沈殿もせず、中層に漂うものも半数程度観察され、水色はやや懸濁し、「見た目アオコ指標」はレベル1程度であった(fig.02写真)。



fig.02 静置後の池水

2009年07月26日、静置後の池水を検鏡したところ、今回の水の華(アオコ現象)は、藍藻のアナベナ スピロイデス クラッサ(fig.03)、ミクロキスティス エルギノーザ(fig.04)、ミクロキスティス ベーゼンベルギー(fig.05)、ミクロキスティス イクチオブラーベ(fig.06)、クロオコックス属(fig.07)、の合計5種からなる複合現象であることが明らかになった。
また、顕微鏡下にケンミジンコ属・ハネウデワムシ・原生動物の出現を確認したことから、雄蛇ケ池でふ化した仔稚魚の餌料環境は、良好と判断される。



fig.03 アナベナ
Anabaena Spiroides var.crassa
スピロイデス クラッサ




fig.04 ミクロキスティス
Microcystis Aeruginosa
エルギノーザ


fig.05 ミクロキスティス
Microcystis Wesenbergii
ベーゼンベルギー



fig.06 ミクロキスティス
Microcystis Ichthyoblabe
イクチオブラーベ



fig.07 クロオコックス属
Chroococcus sp.
クロオコックス属


【考察01】
2009年の雄蛇ケ池の水位と「見た目アオコ指標」レベルの経過は、表01の通りである(table.01 出典※07)。

2009年06月27日 満水 レベル5〜6
2009年07月05日 0.1m減水 レベル4〜6
2009年07月08日 0.3m減水 レベル3
2009年07月11日 0.6〜0.7m減水  
2009年07月16日 1.0m弱減水  
2009年07月19日 1.0m強減水 レベル1〜2
2009年07月23日 1.0m減水 レベル1〜2

table.01 雄蛇ケ池の水位と「見た目アオコ指標」レベルの経過(2009年)

雄蛇ケ池を一周する遊歩道から良く見える、表層の水の華(アオコ現象)を、貯水の1m減水(保持)管理により、改善しようとする方法は、表01の通り「見た目」一定の効果を上げているように見える。
しかし、「実態」は結果に示したように、一見して清澄に見えるサンプル水中にも、水の華(アオコ現象)を引き起こす藍藻類5種が残存しており、残存量は定量的に総量の半数程度と推定される。
雄蛇ケ池においては、2006年夏季より水の華(アオコ現象)が観察されるようになり、2007年・2008年・2009年と4年連続発生している。
その事実は、雄蛇ケ池が、原因藍藻類の異常繁殖を可能とする量の栄養塩の継続的補給環境下にあることを暗示しており、単に貯水の表層水を捨水管理するのは、根源的対策にほど遠い対処療法と言わざるを得ない。
さらに、「見た目」の疑似効果を目指す猿知恵には重大な副作用が懸念される。
水下の水利用は灌漑用で、水稲他の食品生産に直接関係しており、「ミクロシスチン等の毒素が肝臓がんを促進する可能性」や「藍藻類の毒性の発現もほとんど未解明状態」というリスクを、毎年反復発生させるのは、いかがなものか。


【考察02】
雄蛇ケ池を、藍藻類の異常繁殖を可能とする量の栄養塩の継続的補給環境下に追い詰めたものは何であろうか。
●2006年早春に放流されたソウギョ
●水生植物の壊滅状態と激減
●2006年夏季より4年連続発生している水の華(アオコ現象)
これらのキーワードと、現地観察・追跡研究から見える含意は、
「ソウギョが水生植物を喰い、糞塊を連続的に雄蛇ケ池へ排出している」
「ソウギョの糞塊は、菌類・微生物により分解され、藍藻類が利用しやすい中間体に変異している」可能性である。
水面の被植減少にともなう、全層水温の一律上昇も加担していよう。
従って、雄蛇ケ池の水の華(アオコ現象)の繁殖を抑制し、沈静化させるための根源的対策は、「遊泳式栄養塩自動製造散布生物」たるソウギョの取り揚げ・排除と、水生植物の繁殖保護が望まれる。




【参考文献】
(※01)渡辺真利代・原田健一・藤木博太(1994):「アオコ−その出現と毒素−」257pp,東京大学出版会,\4738
(※02)よしさん(2006):「アオコとは(雄蛇ケ池における2006年の事例)」http://wakasagi.jpn.org/
(※03)よしさん(2007):「アオコとは(雄蛇ケ池における2007年の事例)」http://wakasagi.jpn.org/
(※04)よしさん(2008):「雄蛇ケ池のアオコ現象と原因藍藻類の変遷(2006〜2008年)」http://wakasagi.jpn.org/
(※05)よしさん(2008):「見た目アオコ指標と指標写真」http://wakasagi.jpn.org/
(※06)よしさん(2008):「雄蛇ケ池におけるアオコ現象と想定される毒性」http://wakasagi.jpn.org/
(※07)つかじー(2009):「雄蛇ヶ池の話 〜蛇(じゃ)の道は蛇(へび)〜」http://ojyagaike.naturum.ne.jp/

【謝辞】
雄蛇ケ池を観察し旬の話題を提供くださる「雄蛇ヶ池の話 〜蛇(じゃ)の道は蛇(へび)〜」主宰つかじーさんに感謝します。


採取:2009年07月19日(日)13:00 天候○ 気温:32.4℃ (at13:00 mobara) 水温:28.6℃ (at13:00)
水位:1.0m減水 水の透明度:やや不良
室内観察:2009年07月19日(日)〜07月26日(日) 検鏡撮影:2009年07月26日(日)
発表:2009年07月27日(月)牛久沼漁業協同組合顧問よしさん