■雄蛇ヶ池のアオコ現象詳細レポート 2008.9
今年の夏、雄蛇ヶ池のアオコ現象は「見た目アオコ指標」でいうレベル6(最悪のレベル)にまで悪化した。岸際の表層に吹き寄せられた大量のアオコは、水面をマット状に覆いやがて腐敗した。(下の写真)その見た目はまるで汚水のようであり、家畜の糞尿を垂れ流したかのような悪臭が漂っていた。また、アオコとなっている藍藻類は毒素を生成するタイプのものが多く含まれており注意が必要である。(詳しくは下記の調査レポートをご覧ください)

このアオコ現象の原因が、ソウギョの放流であることは間違いないと考える。放流を行う自治体や関係組織はこのような事例をきちんと評価・公表し、自治体間で情報共有するべきである。




以下は転載記事です。本稿転載は、「ザ・レイクチャンプ」よしさんより許可を頂いています。(転載元ページ:亀山ワカサギ情報


■■以下、転載分です■■


雄蛇ケ池におけるアオコ現象と想定される毒性
The toxicity that is assumed to be waterbloom in Onjyaga-ike pond.
【はじめに】
雄蛇ケ池(千葉県東金市)は、1614(慶長19)年に完成した、大規模な灌漑用溜池である。
2006年夏季〜2008年夏季に、藍藻によるアオコ現象が連続発生し、2008年09月に重篤化したため、アオコ現象のレベルと面積・原因藍藻類の同定と変遷を調査し、毒性・釣り人の注意事項・ソウギョ放流と藍藻類の異常繁殖の相関について考察した。


【結果01 アオコ現象のレベルと面積】
2008年09月10日、雄蛇ケ池において、アオコ現象のレベルと面積を目視調査した結果を、国立環境研究所の提唱する「見た目アオコ指標」(※06)に従い、表01にまとめた(table.01)。
レベル
アオコの状況
雄蛇ケ池の該当面積
0 アオコの発生は認められない。 0%
1 アオコの発生が肉眼で確認できない。
(ネットで引いたり、白いバットに汲んでよく見ると確認できる。)
0%
2 うっすらとすじ状にアオコの発生が認められる。
(アオコがわずかに水面に散らばり、肉眼で確認できる。)
0%
3 アオコが水の表面全体に広がり、所々パッチ状になっている。 60%
4 膜状にアオコが湖面を覆う。 20%
5 厚くマット状にアオコが湖面を覆う。 10%
6 アオコがスカム状に湖面を覆い、腐敗臭がする。
(厚く堆積し、表面が白っぽくなったり、紫や青の 縞模様になることもある。)
10%

表01(table.01)アオコ現象のレベルと面積


fig.07 レベル3〜5
堰堤北端

fig.08 レベル6
流入部横

fig.09 レベル6
揚水ポンプ場横

アオコ現象の状況(fig.07-09)


【結果02 原因藍藻類の同定】
2008年09月10日、雄蛇ケ池(堰堤北端)の水の華(レベル5)を採取し、同日、光学顕微鏡にて検鏡および同定した結果を、以下に示す(fig.01-06)。

fig.01 ミクロキスティス
エルギノーザ
Microcystis Aeruginosa

fig.02 ミクロキスティス
ベーゼンベルギー
Microcystis Wesenbergii

fig.03 ミクロキスティス
イクチオブラーベ
Microcystis Ichthyoblabe

fig.04 ミクロキスティス
ビリディス
Microcystis viridis

fig.05 アナベナ
スピロイデス
Anabaena Spiroides var.crassa

fig.06 アナベナの一種
Anabaena.sp

2008年07月13日実施のアオコ現象調査で、原因藻類は藍藻のミクロキスティス エルギノーザ(fig.01)、ミクロキスティス ベーゼンベルギー(fig.02)、ミクロキスティス イクチオブラーベ(fig.03)の3種と、アナベナ スピロイデス クラッサ(fig.05)の合計4種からなる複合現象であることを、既に報告した(※04)。

約60日後の今回調査では、前回確認した4種の他に、雄蛇ケ池で初観察のミクロキスティス ビリディス(fig.04)が優占種であること、およびアナベナの一種(fig.06)の合計6種からなる複合現象であることが明らかになった。
アオコ現象は、発生年による変化の他、同一年であっても、発生初期・盛期と終盤で原因を引き起こしている植物プランクトンに変遷があることの身近な事例である。


【結果03 原因藍藻類の変遷(2006〜2008年)改訂版】
2006〜2008年の3年間に、雄蛇ケ池で観察された藍藻類を【改訂版】にまとめ、表02に示す(table.02)。
2006年08月31日 2007年08月12日 2008年07月13日 2008年09月10日
●Microcystis Aeruginosa ●Microcystis Aeruginosa
●Anabaena Macrospora
●Oscillatoria Kawamurae
●Microcystis Aeruginosa
●Microcystis Wesenbergii
●Microcystis Ichthyoblabe
●Anabaena Spiroides var.crassa
●Microcystis Aeruginosa
●Microcystis Wesenbergii
●Microcystis Ichthyoblabe
●Microcystis viridis
●Anabaena Spiroides var.crassa
●Anabaena.sp

table.02 原因藍藻類の変遷(2006〜2008年)改訂版


2006年に発生した水の華(アオコ現象)の主原因は、ミクロキスティス エルギノーザであった(※02)。
2007年は、原因となり得る藍藻がミクロキスティス エルギノーザの他に、直線状のアナベナ マクロスポーラや、オシラトリアが加わり、計3種と拡大した(※03)。
2008年07月は、ミクロキスティス エルギノーザの出現が継続しているものの、ミクロキスティス属はベーゼンベルギーとイクチオブラーベの2種が新規に出現し3種となり、計4種の複合であった(※04)。
2008年09月は、前述4種に、ミクロキスティス ビリディスが優占種で出現し、アナベナ属(未同定)も加わった計6種の複合となった。

【考察01 毒性と留意点】
藍藻類の異常繁殖による問題は、水の華(アオコ現象)を引き起こし、見た目の景観が悪いことや、層が形成されるようにレベルが進めば、圧密された表層の腐敗臭が耐えがたいことに留まらず、藍藻類により毒素が生産されることが、問題の本質であることを前報で指摘した(※04)。

表02中、ミクロシスチンを生産する藍藻としては、アナベナ・オシラトリア・ミクロキスティス エルギノーザ・ミクロキスティス ベーゼンベルギー・ミクロキスティス ビリディス・が知られ、7種類のミクロシスチンが確認されている。
強い肝臓毒のミクロシスチンは、致死濃度以上で1時間以内の死をもたらすFDF(fast death factor)と呼ばれ、「肝臓組織が破壊され、破壊された肝細胞が血流に乗り肺の毛細血管を閉塞させ、呼吸困難・窒息の作用をする」という、急性毒性に特徴がある(※01)。
ミクロシスチンは、雄蛇ケ池において既に生産されていると推定され、貝類と一部の動物プランクトンにも生体濃縮されているものと考えられるから、流末の利水において、養魚場・アイガモ水稲作・家畜の飲み水等はリスクを伴うと考えられる。

今後数年は、既知の脅威(強力な神経毒アナトキシンを生産するアナベナ flos-aquae の出現・他)を、誘因の原因者・雄蛇ケ池管理者は、定期的にチェックし安全を公表する責務があろう。
潜在的には、上述以外の藍藻類の毒性の発現はほとんど未解明状態(作用も不明)という人類には未知の脅威があることを、忘れてはなるまい。

【考察02 釣り人の注意事項】
前述の毒性に関し、雄蛇ケ池を利用する釣り人に対し、危険を回避する定性的かつ具体的方法をいくつか挙げれば、以下のようであろう。
●雄蛇ケ池の魚介類(コイ・バス・アメリカザリガニ・モクズガニ等々)を直接食用に用いない
●雄蛇ケ池のブルーギル等を家禽・家畜に与え、その後、家禽・家畜を人の食用に用いない
●落水時等、池水を飲み込まない
●傷口(親指の腹)に、池水を付けない(事前にカットバンを貼ることを推奨)
●雄蛇ケ池に漬けたラインを口で湿らせ結束しない、歯で切らない(ハサミを推奨)
●魚や池水を触った手で、パンを千切って食べない(手洗いを推奨)
●帰宅後、雄蛇ケ池で使用した釣り道具を触り、その指を舐めない
そういうことに注意したい。


【考察03 ソウギョ放流と藍藻類の異常繁殖の相関】
2005年までの雄蛇ケ池は、オオカナダモ・ヒシモ・ハス・ヨシ等の水生植物が繁茂し、釣り人田辺某に「日本であれだけのハスやウィードがあって、しかもレンタルボートもあるバス釣り場は俺が知っている限り他には無い」と言わしめるほどの好釣り場で、濁りのない「クリアー」な水色であった。
現場関係者の要望により、2006年早春に東金市がソウギョ(未成魚200尾)を放流し「藻の繁茂防止を目的にソウギョを放流しています」と看板を設置したことは記憶に新しい。
看板から見える含意は「ソウギョに藻を喰わせて解決の図式」に相違なかろう。

ソウギョ放流推進派(現場関係者+東金市)の思惑通り、ソウギョは本能に従い藻を喰い、糞塊を池中に排出した。
2006年08月、雄蛇ケ池で植物プランクトンの藍藻1種による水の華(アオコ現象)が発生(※02)。
2007年07月、雄蛇ケ池のオオカナダモ・ヒシモの壊滅状態。
2007年08月、雄蛇ケ池で藍藻3種による水の華(アオコ現象)が発生(※03)。
2008年07月、雄蛇ケ池のヨシ・ハスの激減状態が顕著になる。
2008年07月、雄蛇ケ池で藍藻4種による水の華(アオコ現象)が発生(※04)。
2008年09月、雄蛇ケ池で藍藻6種による水の華(アオコ現象)の重篤化が進行中(本稿)。

上述のように時系列を整理すれば、
●「藻」(狭義のオオカナダモ・ヒシモ)に限らず、ヨシ・ハス等の水生植物もソウギョに喰われ、皿池状の池底は「丸坊主」状態になった
●ソウギョに喰われた水生植物は、糞塊となって池中に拡散している(※05)
●藍藻によるアオコ現象は、2006年夏季〜2008年夏季に連続発生し、現象のレベルと面積は年々エスカレートしている、という事実が把握できる。
さらに、事実と傾向を合理的に説明するには、
●「ソウギョによる水面の被植激減が夏季全層一律水温上昇を招いた」
●「底泥中に蓄積された既存栄養塩と、ソウギョの糞塊は、高水温により再溶解・分解が促進され、藍藻類の異常繁殖に加担した」と考えられ、ソウギョ放流がアオコ現象の発生に直接的に関与連動している可能性が極めて高いと言わざるを得ない。

何のことはない、雄蛇ケ池のマテリアルバランスは、ソウギョを介して水生植物が藍藻類の異常繁殖(アオコ現象)へと移行しただけのようである。
「ソウギョに藻を喰わせて解決の図式」を描いた放流推進派の目論みは、35億年の生残本能に守られた藍藻類の援護をしたことにとどまらず、雄蛇ケ池を水溶性毒素の一大供給源と化したようで残念だ。


【参考文献】
(※01)渡辺真利代・原田健一・藤木博太(1994):「アオコ−その出現と毒素−」257pp,東京大学出版会,\4738
(※02)よしさん(2006):「アオコとは(雄蛇ケ池における2006年の事例)」http://wakasagi.jpn.org/
(※03)よしさん(2007):「アオコとは(雄蛇ケ池における2007年の事例)」http://wakasagi.jpn.org/
(※04)よしさん(2008):「雄蛇ケ池のアオコ現象と原因藍藻類の変遷(2006〜2008年)」http://wakasagi.jpn.org/
(※05)よしさん(2008):「これがソウギョの糞塊だ(千葉県雄蛇ケ池の事例)」http://wakasagi.jpn.org/
(※06)よしさん(2008):「見た目アオコ指標と指標写真」http://wakasagi.jpn.org/

採取:2008年09月10日(水)12:30 天候○◎ 気温:27.2℃ (at12:00千葉) 
水位:4.0m(余水吐水位目盛) 水の透明度:不良(アオコ現象あり)
発表:2008年09月21日(日)牛久沼漁業協同組合顧問よしさん

■■ここまで、転載分です■■